『疾走プレイリスト』はこれまで、さまざまな走るひとたちから、ランと音楽に関する言葉を集めてきた。それでもなお、両者の関係性を語りきることはできない。だけど私たちはその答えへ近づくために、一歩でも前に進みたいと考えた。
フルマラソンと向き合う厳しい数時間のあいだ、ランナーに対して音楽ができること。めまぐるしく変わる感情に寄り添い、その身体をも支え、ブーストする曲は、いったい何なのか。フルマラソンを走りきるために最適なプレイリストを、その意義や責任にふさわしい手順を踏んで、考えてみたい。そこで集まってもらったのは、42.195kmを幾度も駆け抜け、また、音楽について誰よりも深く考えてきた走るひとたち。フルマラソンのための“最強プレイリスト”制作会議が始まった。
変わり続ける心と体に、4区間のプレイリストが寄り添う
まずは、42.195kmを4つに区分した。スタートから10km地点までの1区は「走り出したくなる曲」を20曲、10~30km地点までの2区には「ランの楽しみを深めてくれる曲」を32曲ピックアップする。心身ともにつらくなる30~35km地点の3区では「強く背中を押してくれる」8曲を選び、ラストの約8kmは「走れなくなったときの」8曲で締めくくる構成だ。区間に応じて各メンバーがあらかじめ組んできたプレイリストや候補曲から、意見を出し合ってまとめていく。それぞれがフルマラソンを走った経験に基づき、その状況で本当に心へ響く曲や順番を検討することで、トータル68曲、約5時間のプレイリストができあがる計算だ。
映画の主人公やオリンピック選手にもなれる1区
果てしない道のりへと乗り出す1区の選曲では、初の名古屋ウィメンズマラソンでサブ4を達成しているタレント/モデルの三原勇希が口火を切った。みずからが映画の主人公になったような気分で走り出せる『007 ジェームズ・ボンドのテーマ』を推し、メンバーの賛同を得る。スタートラインに立ったときの「オリンピック感」「選手になったような気持ち」は、全員の共感するところ。その感覚をベースに、次々と曲順が決まっていった。
それぞれに心地よい曲を耳元で鳴らし、軽快に2区を駆け抜ける
淡々と距離を積んでいく2区のテーマは「ランの楽しみを深めてくれる曲」。それぞれが普段走るとき、どんなふうに音楽を聴いているかを振り返りながら、セレクトを進めていく。流れるように心地よい曲をピックアップしたのは、三原勇希とロックバンド『BIGMAMA』Vo./Gt.の 金井政人。濃厚な邦楽ロックを詰め込んだタレント/女優・高山都と、あえてミニマルなインスト曲ばかりを選んだ音楽ジャーナリスト・鹿野淳の対比も面白い。この区間は、各々が組んできた曲順をシャッフルせず、塊のまま並べることで完成。各プレイリスト間のつながりもスムーズで、メンバーの個性が上手くグラデーションする仕上がりとなった。
一人ひとりの“30km以降”が導き出した3区/4区のアンセム
最も応援が必要な3区は「強く背中を押してくれる曲」、ラストスパートの4区ではいよいよ「走れなくなったときの曲」を考えていく。痛みと闘いながらぎりぎりで走りきる心身を支えたり、ゴール直前でこれまでの道のりを走馬燈のように思い出したり……この2区間だけでも、音楽はさまざまな役割を果たしている。そして、自身の経験した“30km以降”を思い浮かべつつ、メンバーが満場一致でラストソングに選んだのは、いわば“究極の俺ソング”。誰もが口ずさみ、そのゴールを喜びたくなる、多幸感いっぱいの1曲だ。
こうして完成したのが、疾走プレイリスト「フルマラソンによりそう音楽」。たったひとりで42.195kmを走り続けるひとたちの心と身体に、68曲もの音楽たちがバトンをつないで、並走してくれる。このプレイリストで、あなたの42.195kmはどのように景色を変えるだろうか?
Photo: Imai Takashi/Text: Sugawara Sakura
ちなみに、こちらのプレイリストを聴くにはオフライン再生がおすすめ。前もって曲をダウンロードしておくことで、電池の消費や通信量を抑えることができる。約5時間、快適に再生を続けるためにも、ぜひこちらの機能を活用してみては?
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